梅雨空に願うこと【羽田空港ターミナルにて】
月に一度の大阪帰省。
羽田空港で、伊丹行きの便を待っていた。
「広島行きは天候不良のため、これより天候調査を行います」
大阪に向かうわたしは、聞こえてくるアナウンスをBGMのように受け止めていた。
すると、近くに座っていた小さな女の子が
「おばあちゃん、ヒロシマいけないの。ヒロシマにはいけないの」
と、電話に向かって一生懸命に話している。
(いや、まだ決まったわけじゃないし)
人ごととはいえ、行く末が気になる。
母親が説明したのだろう。
「ヒロシマはお天気がわるいから、飛行機が飛ばないかもしれない」と。
しかし、子どもには「かもしれない」の部分が伝わっていなかったようだ。
子どもというのは、いまを生きている。
将来のことも、近い未来のことだって、彼らの頭のなかには存在していないのだ。
(大丈夫、きっとお天気は回復するよ)
わたしは母娘を尻目に、最寄りのお化粧室へと向かった。
鏡を見ているとき、再びアナウンスが流れた。
「広島行きは天候調査の結果、定刻どおり運行いたします。ただし悪天候の場合は、福岡空港へ着陸する予定です」
(よかった!)
わたしは心のなかで、小さくガッツポーズをした。
鏡のなかのわたしは、人知れず笑っていたと思う。
見知らぬ女の子。
夏休みが来るのを、おばあちゃんに会えるのを、きっと心待ちにしていたに違いない。
とりあえず、西に向かえるね。
広島空港周辺の視界が、良好でありますように。
お祖母さまとの時間が、楽しいものとなりますように。
梅雨空のもと、女の子の晴れやかな笑顔を祈った。
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