保安要員としてのCAの訓練【エマージェンシートレーニング】
前回ブログを更新してから、ずいぶん間が空いてしまった。
五月の末に、エマージェンシートレーニング(緊急保安訓練)があったためだ。
それは年に一度やってくる、われわれにとってまさに「エマージェンシー」な期間。
外資系エアラインのわが社では、日本人乗務員は一人か二人ずつ現地に送られるので、それぞれに訓練を受ける時期は異なる。
わたしの場合、例年この時期と決まっているが、今回は大の仲良し同期のM美と一緒にアサインされたので、とても心強く楽しい訓練となった。
楽しいとはいっても、準備の段階から訓練終了までは気の抜けない日々。
機材も設備も業務内容も、少しずつ改良され進化していくから、何年飛んでいようが楽になるなんてことはない。
新しく覚えること、既存の知識のブラッシュアップなど、つねにアップデートが求められるのだ。
訓練に先駆けたウェブトレーニング
訓練に先立ち、まずはウェブテストに合格しなければならない。
これは、現地で行われる本国のクルーと共に受ける集団授業の予習も兼ねている。
試験にパスするため、腰を据えて自習に励む。
以前は、紙ベースのぶっといマニュアルと問題集とで机がいっぱいになっていたが、現在はパソコン、タブレット端末のみ。
スッキリ勉強できるのはいいことだが、内容のボリューム的にはさほど変わらない。
必須項目、参考資料などを合わせると、けっこうな量のウェブ教材が用意されている。
この歳になって全力で勉強するのも、この時期をおいて他にないのではなかろうか。
というのも、これに落ちたら飛べないからである!
教材といっても、従来のテキストにあるような、文字や表の羅列ばかりではない。
ビデオや写真などをふんだんに使った構成となっているため、飽きることなく進めることができる。
実際に働いている同僚のクルーが出てくる動画などは、親しみのあまりガン見してしまうくらいだ。
老若男女が登場するので、どういう人選なのかはわからないが、みんな魅せ方をよく知っている。
日本人と違って、人前で話すことにとても慣れているのだ。
若いころから馴染みのクルーが立派にしゃべっているのを見ると、時の流れを感じるとともに、誇らしい気持ちにさえなる。
なかにはストーリー仕立ての教育ビデオもあり、彼らの演技のうまさに感心することもある。
リアリティがあるから、我が事のように受け止めることができる。
本物の俳優さんを使わない理由は、そういうところにあるのかもしれない。
Questionnaires
すべてのウェブトレーニングを終え、模擬テストをくりかえし、もう大丈夫というところまできたら。
ラスボスのごとき最終テストに臨む。
制限時間が設けられているので、電話がならないよう、宅急便がこないよう、事前に祈りを捧げる。
もし邪魔が入ったとしても、心頭滅却してスルーするよう、あらかじめ腹を決める。
昔は、訓練所にあったコンピュータールームで、インストラクターの監視下のもと粛々とテストを受けたものだ。
だが今は、全社員にiPadが支給されており、おのおのが都合のいい時間に好きな場所で受けることができる。
わたしは気が散りやすいので、毎年自宅で万全の環境を整えてラスボス(最終テスト)を迎え撃つ。
「えっ?家で個人で受けられるの?そんなのカンニングし放題じゃん!」
なんて声が聞こえてきそうだが。
問題数に対して制限時間が圧倒的に短いので、調べものをしている余裕はほとんどない。
ひとつの質問にこだわっていると、あっという間にタイムアップしてしまう。
そんな危険を冒さないためにも、しつこいドリルが欠かせないのだ。
毎度のごとく緊張し、決して慣れることのないこのテスト。
終わった瞬間の開放感は、筆舌に尽くしがたいものがある。
だが、本番はここからスタートだ。
現地で行われる保安訓練の、長い長い一日に関しては、次回以降の記事に記すことにする。
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