日本語を話したい外国人客と、英語を話したい日本人客
今日も無事フライトが終わった。
最近わが社の機内では、ある点において、あべこべな現象が起きている。
それは、日本人乗務員のわたしに対して、外国人のお客さまが日本語を話し、日本人のお客さまが英語を話すことである。
外国人客のなかには、日本が好きで日本路線に乗っているかたが多いと思われる。
以前と比べて、日本語を話せるお客さまも、だんだん増えてきた。
いろんな種類の乗客がいる
今日いちばんびっくりしたのが、ヨーロッパ人のお客さまから
「チーズはまだアルか!」
と言われたことである。
反射的に、
「まだアル!」
と答えそうになったが、なんとか踏みとどまった。
これは命令口調で言っているわけではなく、日本語でコミュニケーションしたいだけなので、かえって微笑ましい。
逆に、わたしに対して、かたくなに英語を話しつづける年配の日本人客もいた。
クルーが彼のそばを通るたびに、
「話しかけられたのだけど、よくわからないからあなた行ってきて」
と頼んでくる。
そのつどお席までうかがうのだが、カタコトの英語で一生懸命意思を伝えようとされる。
「日本語で大丈夫ですよ」
と申し上げるも、いっこうにやめる気配はない。
日本人に見えるアジア人(中国人や韓国人など)の場合もあるから、十分注意が必要だ。
だがこのかたとは、搭乗時に日本語でやり取りしたし、その醸し出す雰囲気からして、明らかに日本人なのである。
また、わたしは典型的な日本人顔なので、向こうから外国人だと勘違いされている可能性はきわめて低い。
お食事のサービスが終了し、機内の照明を落としたころ、スチュワードのエミリーがやってきて言った。
「あのお客さま、なにかおっしゃっているんだけれど、やっぱりよくわからないからお願いしてもいい?」
「オッケー」
わたしはお客さまに向かって
「いかがなさいましたか?」
とたずねた。
すると、ご自分の時計をなんども指差して、ばりばりのジャパニーズイングリッシュで(ごめんなさい毒吐きました)
「イズ ジス タイム フォー スリープ?」
とおっしゃった。
即座に、時差を考慮しておられると悟ったわたしは、
「はい、いまお休みいただいたほうがよろしいかと」
と、ていねいな日本語でお答えしたのだが、その目にはガッカリしたような、あるいは、なじるような色が浮かんでいた。
あれはいったい、なんなのだろう?
日本人同士が会話をするのに、母国語で話さない理由がわからない。
英会話の練習をされたいのだろうか?
それとも、機内に入った瞬間から、海外モードに切り替えたいのだろうか?
しかし、困ったときには自然と日本語が出ていたので、ご旅行をより楽しみたいのだとお察しして、できるかぎり最後まで英語で対応させていただいた。
この仕事をしていると、毎回違ったお客さまに出会える。
文化の違い、個人の違い。
それぞれのお客さまに喜んでいただける、オーダーメイドのサービスが提供できるよう、日々機転をきかせていきたいと思う。
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