外資系エアラインのブリーフィング
フライト前には毎回、ブリーフィングと呼ばれる打ち合わせが行われる。
安全面、サービス面、あらゆる角度から、クルー全員で連携を高めていく。
外国の航空会社なので、日本の空港内にブリーフィングルームはない。
よって成田からのフライトでは、お客さまをお迎えする前のキャビンで集合することが多い。
まずはキャビンクルーだけで、客室内に特化した事柄について話し合う。
いちばんのトピックは、セキュリティ&セーフティに関すること。
つづいて、お客さまのカテゴリーの確認や、サービスの細かい内容についてなど。
しばらくすると、ひと通りチェックを終えた操縦室からコックピットクルーがやってくる。
キャプテンからは、飛行状況や飛行時間など、包括的なフライト情報が告げられる。
わたしたち日本人乗務員は、ここで初めて彼らに合流するため、軽く自己紹介をする。
長く働いているわたしは、だいたいが顔見知り。
自己紹介というより、ハグですべて済んでしまうことのほうが多い。
パイロットがくれた差し入れ
ある日のブリーフィングは、とても面白かった。
3番目のパイロットが、おもむろに菓子折りを差し出してこう言ったのだ。
「孫が生まれたんだ!みんな、祝ってくれ!」
「Congratulations!(おめでとう!)」
菓子折りは、近くにいる人に渡されて、つぎつぎにパスされていく。
パスされる順番は、入社年次とか、役職の上下とか、まったく関係がない。
わたしの手元にまわってきた。
菓子折りの中身は…
なんと「餅」だった!
お祝いごとだから紅白饅頭、ってわけではなく(彼らはそんなこと、知る由もない)薄い桃色をした、求肥的な?羽二重的な?やわらかそうなモチ。
ステイ中に買ったのか、それともフライト前に成田空港内で見つけたのか。
箱の中に整然と並んだ餅を見た、彼らの反応といったら。
「これはなんだい?」
「見たことがないわ」
「アイオンでも売ってる?」←スーパーのイオンのことを、なぜかこう発音する(笑)
衝撃の差し入れに、ざわめくキャビン。
モチ、モチ、とみんなが口々にささやいている。
唯一の日本人であるわたしは、全員に聞こえるよう大声で言った。
「It’s MOCHI(それはモチです)」
「オオーッ!」
いちいち、反応がすごい(笑)
「なにでできているの?」
来ると思った。その質問。
「It’s made from MOCHI rice(もち米でできています)」
「Oooh !」(もはや何がオオーッなんか分からん😂)
これからヨーロッパへ発とうという、至極ヨーロピアンなチームで、おもちを頬張る。
不思議な、でもとてもほのぼのとした瞬間だった。
しかし外資系の飛行機の中で、餅が振舞われているとは、想像もされないことだろう。
「Boarding position」
ほどなくパーサーから、餅場…ならぬ、持ち場につくようにと合図が入った。
まもなく、お客さまがご搭乗される。
わたしは最後の餅を、コーヒーで流し込んだ。
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