外資系航空会社における日本人乗務員の役割、そして醍醐味
日本人CAがもっとも忙しい季節【夏】
ナッツが来っるぅ〜♪ きっと夏が来っるぅ〜♪
今年もはじまった、観光シーズン。
平素はビジネス客がほとんどを占める、弊社の機内。
ヨーロッパがいい季節になると、観光客の割合がグーンと増える。
ビジネスマンは英語が話せるし、乗ってから降りるまでの大まかな流れを理解しているので、わたしの役割は、ほかの外国人クルーとさほど変わらない。
しかし日本人観光客は、わたしひとりを頼りにしている人も多いので、あっちの通路こっちの通路と、パックマンみたいに移動することになる。
パックマンは、クッキーを食べてパワーアップするが、わたしたち日本人乗務員は食われっぱなしで、命がいくつあっても足りないくらいだ。
それでも最近じゃ、トラブルが起きても「オレに任せとけ!」とばかりに風を切って立ち向かう(男前!)
スキルが身についたのか、はたまた図太くなったのか←両方じゃろな〜
乗務員 VS 乗客・手荷物ウォーズ攻防戦
わが社では離着陸の際、すべての手荷物を上の物入れか、前の座席の下に収納していただくことになっている。
ひざの上や足元に置いておきたがる人もいるが、緊急脱出の妨げになるという理由で、それこそ「身ぐるみ剥がす」勢いで、すべての障害物となりうるものを取り除かなくてはならない。
日本の航空会社では、ひざの上に抱えていてもいいケースが多いので、なかには難色を示される人も。
だが郷に入っては郷に従えで、ご利用いただくからには、こちらの決まりを守ってもらわないといけない。
わたしは日本人なので、少々厳しすぎると思いつつ、会社のルールにしたがって業務にあたっている。
そして今年もはじまった。
荷物を離したくない観光客 vs 片づけたい乗務員の、仁義なき戦い!
(ここで例のテーマソング)
チャララ〜チャララ〜♪
英語でペラペーラと言われて、カバンを取り上げられたら、たしかに「不信感」ですよね。
ご年配のかたなら、なおさらのこと。
いくら自分の頭上の物入れでも、「なんで?」って思われるかたがいて当然だと思う。
そのために、わたしが日本語でアナウンスを入れるのだが、聞いていない人の多いこと多いこと…
なので、
「緊急時に備え」
「安全上の理由により」
「お足元の自由を確保するため」
という文言を、おひとりおひとりに説明して分かってもらう。
でないと飛行機を出すことができない!!!
わたしはときどき、自分が「追い剥ぎ」になったような感覚におそわれることがある。
それほどわが社は、安全面に関してうるさいのだ。
ある日の出発前のエピソード
「荷物を離してくれない日本人客がいるから助けて」
先日も、クルーに救援を頼まれた。
お客さまのお座席までうかがって、事情を説明する。
だがその年配の男性は、小さいバッグをヒシと抱いて、かたくなに拒否される。
さいわいビジネスクラスは、前の座席下が広く、収納スペースとしても使用可能なため、その最奥にお納めいただくようご提案した。
すると、しばらく拒絶反応を示されていたお客さまが、
「そのバッグには、一億円が入っているからダメなんだ」
と、ボソッとおっしゃった。
(イチオク…エン?)
口角ひとつ上げないで、イチオクエン…。
日本人男性はとくに表情に乏しいので、真意を測りかねることがある。
しばらく我々を困らせていたので、まわりの目が気になられたのか、お客さまはわたしに「あんたがやっといて!」と言いのこし、お化粧室に行こうとした。
「しめた!」と思った。
わたしは少し大げさに、
「わたくしなんかが、イチオクエンに手を触れてよろしいんでしょうか?」
と言ってみせると、近くの座席からは、どっと笑い声が起きた。
渦中のお客さまはというと、背中を向けたまま「あんたにゃ負けたよ」といった風にヒラヒラと手を振って、お化粧室に消えてしまわれた。
クルーから、「どうやって納得してもらったの?」と聞かれたので、(イチオクエン)の話をしたら、「あの無表情の紳士がそんなジョークを言ったのか」と驚いていた。
その後も、このお客さまにはクルーがたびたび手を焼いていたが、そのつど呼び出されては御用聞きに伺っていた。
これをやりがいと取るか、厄介と取るかで、仕事内容はずいぶんと変わってくる。
だれもが満足させられなかったお客さまに喜んでいただき、最後にありがとうなんて言われた日にゃ。
飛び上がるほどうれしい。
わたしは、根っからのサービス人間なんだなと思う。
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