ミセスCAのオン&オフ日誌

現役外資系CAのブログ。 フライトエピソードの他、宝塚・ジュエリー・コスメ・ワインなどの情報を発信しています。

桃の季節に思うこと【大阪に住む親友へ捧ぐ】

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姉のような同級生

 

今年も桃が届いた。

東京では、めったにお目にかかることのできない、大きくて立派な桃。

箱を開けると、部屋じゅうにひろがる、優しくて甘い香り。

年に一度、この時期だけのお楽しみだ。

差出人は、郷里に住む親友のT美である。

 

わたしたちは、中学の軟式テニス部時代からつづく仲。

帰宅ルートが同じなのがきっかけで仲良くなった。

頼りなくておっちょこちょいなわたしを、いつもフォローしてくれる、しっかり者のT美。

ふたりの関係性は、大人になった今でも変わらない。

 

毎日、一緒に学校に通っていた。

したくが遅いわたしを、あきれながらも根気よく待ってくれた。

母「T美ちゃん、ごめんね〜」

T「大丈夫です〜」

わが家の玄関先で繰り広げられる、お決まりの朝の風景。

 

きっちりふたつに分けて結った、栗色の細い髪。

肌が透き通るように白くて、寒い冬の日には、ふっくらした頬が桃色に染まった。

 

わたしは対照的に、ショートヘアで色黒。

大人になって白くなったけれど、当時は暗闇にいると黒光りすらしていた。

 

同じ条件のもとで練習をしているのに、ほとんど日焼けをしないT美がうらやましかった。

そして、くせのないサラサラの髪も。

 

テニス部内には、明確なヒエラルキーが存在していた。

人のサポートが上手で、前衛としての技術も高かったT美。

キャプテンであり一番手の後衛C帆と、ダブルスを組んでいた。

 

かたやわたしは、カラ振りが得意。

バツとして、いつも顧問の先生から走らされていた。

私語や遅刻も多かったので、人の倍、走らされていた。

 

なのにT美は、わたしを見捨てるどころか、ずっと見守り支えてくれた。

 

中学を卒業するまでの3年間、交換日記をやっていた。

当時の流行で、たいていの女子は友達とノートを交換して楽しんでいた。

いわゆる「丸文字」がはやった時期でもある。

わたしも例に漏れず、かわいらしく崩した文字を書いていた。

だがT美だけは周りに流されず、達筆な字を書きつづけた。

 

堅実なT美が選んだ職業は、地方公務員。

一生実家の近くで暮らしたいという意思による選択だ。

採用試験には一発で合格。

そして30年勤めたあと、いさぎよく早期退職してしまった。

最近では、書道師範の腕前を活かして、近所のお寺で御朱印を書いている。

あのとき丸文字を書いて、変なクセがつかなくて良かったね。

 

わたしは彼女の流麗な書体が好きだ。

毎年欠かさず送られてくる桃の箱には、手書きで宛名が書いてある。

お互いに子どもができてからは、送り状の名前が息子同士のものに変わった。

帰省するたび親子で遊びに行っていたので、彼らは兄弟のように仲がいい。

T美と2人の息子、わたしと息子、計5人のグループラインも存在するほどだ。

 

子どもが生まれる前に、ふたりで決めていたことがある。

それは、相手の子どもに自分のことを「おばちゃん」や「◯◯のお母さん」と呼ばせないことだ。

小さいころから下の名前で呼ばせていたので、いまも変わらずそう呼んでくれる。

家族ぐるみの付き合いというより、近しい親戚のような間柄である。

わたしの母は、かねてからT美のことを「あんたのお姉さん」と呼んでいた。

だから生まれた子どもは、いとこ同士みたいなものだ。

 

T美の結婚相手は、同じ市役所に勤める同い年の男性。

実家は桃農園を営む、いわゆる「地の人」だ。

気がきく彼女は、嫁ぎ先のみならず、ご近所の人たちからも重宝されている。

 

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仕事のかたわら、毎年桃の作業を手伝ってきた彼女。

わたしが結婚した年から、東京に桃を送ってくれるようになった。

 

わたしが嫁ぎ先で可愛がってもらえるようにと、毎年ふた箱。

プラスチックのバンドで束ねられたそれを解いて、お義母さんのところへ送る。

いつも弾んだ声でお礼の電話がかかってくる。

遠く離れた大阪から、嬉しそうにそのやりとりを見ているT美の姿が浮かんだ。

 

海外やファッション、コスメにもジュエリーにも興味がないT美。

地元に根付いた暮らしを送る彼女と、文字通り「地に足のつかない」仕事をするわたし。

興味の対象や、生きている環境はまったく正反対と言ってもいい。

なのに、お互いがお互いを必要とする理由は、足りない部分を補っているからだろう。

考えかたや、物事に対するスタンスも異なるわたしたち。

それでも仲良くいられるのは、心の根っこの部分が同じだからだと思う。

 

桃に込められた友情

 

今年はお天気が芳しくなく、桃の出荷も危ぶまれたそうだ。

現役でバリバリ活躍していたおじいちゃんも、年々年老いてきた。

T美の夫と同様、ふたりの孫たちは、どちらも農業を継ぐ意志はない。

ここ数年は、「今年が最後、今年が最後」とずっと言われている。

 

夏の風物詩、桃。

それはまるで宝物のように、水色の箱の中で輝いている。

もし、あの箱が届かなくなっても、思い出はみずみずしいままだ。

いつの日か、桃が採れなくなってしまっても。

わたしたちはいつも、目には見えない固いバンドで結ばれている。

 

冷蔵庫で冷やした、最後の桃を頬張る。

口の中いっぱいに広がる、馥郁たる香り。

できることなら。

来年もまた、この幸せな香りで満たされますように。

 

 

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