舞台の中心へ愛を叫ぶ【ご贔屓に届け】
先日、宝塚歌劇団宙組トップスター・真風涼帆さんの喉の調子がおかしいと、ツイッター上で話題になった。
結局、何事もなかったようなのだが、先日に限らず、この手のツイートは、タカラヅカファン界隈では日常的に行われている。
みんな自分のご贔屓に対しては、少しでも異変を感じると、過剰に心配する傾向にある。
これを愛と呼ばずして、なんと呼ぶだろう。
次元の違う話で恐縮だが、わたしの息子はミュージカルの世界に足を踏み入れつつある。
昨年、大学入学と同時にインカレのミュージカルサークルに入団し、初舞台を踏んだ。
池袋にある小さなシアターだが、宝塚歌劇のB席ほどのチケット代がかかる、本格的なものだった。
人気のブロードウェイミュージカル。
6日間、マチネとソワレ、あわせて10回の公演。
1年生ながら2番手のポジションで、出番も多かった。
アップテンポな曲が多い演目だったし、日々全力投球するものだから、はたして最後まで持つのかと不安が募った。
その懸念は的中。
千秋楽の前日、彼は病院へとかけこんだ。
主演の男の子も同じく、のどが限界に達していて、ふたりで一緒に受診したのだという。
千秋楽に行かなかったわたしは、終演後、祈るような気持ちでTwitterを開いた。
するとそこは、舞台を観にきてくださった皆さまの、優しい称賛の声であふれていた。
ファンの方々というのは、なんと温かくありがたい存在なのだろう。
お顔は見えなくても、息子の今を、そしてこれからを、大きな目で見守ってくださる。
つぎの舞台は3月に、上野の劇場で上演される。
こんどは1週間の公演予定だが、すべてダブルキャストで行われるそうだ。
そのため前回よりもノドを休める時間がとれるので、身体的には余裕があるという。
だが共演者には、すでにプロとして活躍されている役者さんも多い。
演出家自身も現役のミュージカル俳優(東宝「エリザベート」や「モーツァルト」に出演されている)なので、お稽古はかなり厳しいものなのだそう。
先日は、◯◯◯◯役ダブルキャストの子と、ごはんを食べて帰ってきた。
(「◯◯◯◯会」と呼んでいた)
自分たちの役柄について意見を出しあったり、熱く語ったりしたそうだ。
それぞれの役に対するアプローチがまったく違っていて驚いたと、興奮気味に話していた。
同じ役でも演じる人が違うと、まったくイメージが変わるのはこのためだ。
役替わりのタカラジェンヌさんたちも、「ルドルフ会」「アンドレ会」「ティボルト会」などと称して、お食事に行ったりするのかな?と、妄想がふくらんだ。
タカラジェンヌをはじめ舞台に立つ人たちは、肉体的にも精神的にもギリギリのところで頑張っている。
なのにいつも明るく笑って、ファンに夢を与えてくれる。
そんな姿を見るにつけ、心からのエールを送らずにはいられない。
たとえ一人一人の顔は見えていなくても。
わたしたちの想いは、きっと届いているはずだ。
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