星組公演「眩耀(げんよう)の谷」「Ray」観劇レポート
やっぱり宝塚が好き
先日、約半年ぶりに宝塚歌劇を見に行った。
観劇が趣味のわたし。
劇場へ行けないこの6ヶ月間は、無味乾燥の日々だった。
スカパーの宝塚歌劇専門チャンネル「タカラヅカ・スカイ・ステージ」や「タカラヅカ・オン・デマンド」のライブ配信など、家にいながらオタク心を満たす術はあった。
だが、生の舞台の感動といったら。
封印していた、さまざまな感覚がよみがえってきた。
人は、好きなことをしているときがいちばん幸せなのだ。
コロナのせいで、そんな基本的なことすら忘れかけていた。
コロナ禍に舞い降りた名作「眩耀の谷〜舞い降りた新星」「Rayー星の光線ー」
演目は「眩耀(げんよう)の谷〜舞い降りた新星〜」「Rayー星の光線ー」
トップコンビ・礼真琴さんと舞空瞳さんを中心とした、新生星組のパワーが炸裂する舞台だった。
お芝居「眩耀の谷」では非常に細やかな心理描写がなされ、一つ一つの楽曲からも感情の流れがひしひしと伝わってきた。
随所に散りばめられた美しい舞は、見事の一言に尽きる。
ほとばしる躍動感と、雅なたおやかさが絶妙に溶けあった、まさに幻想歌舞録。
特筆すべきは、この壮大なる歌舞録のラストを、たった一人で昇華させる役割を担う有沙瞳さん。
まるで彼らの神〝瑠璃瑠”が降りてきたかのごとく。
劇場は一瞬にして、神々しい空気に包まれた。
(わたしは感動のあまり鳥肌がたちました)
まだ公演中なので多くは語れないが、紆余曲折した物語が大団円を迎えるさまは圧巻だ。
ショー作品「Ray」は、観劇された皆さんが仰っていたとおり、体感「10秒」の作品。
はじめて聞いたときは「みんな大げさだなぁ」と思っていたけど、本当にそうだった!
それほどスピード感あふれる展開で、瞬きすることすら許されないような勢いがあった。
眩いばかりの光線を放つ星組生粋の御曹司、礼真琴さん。
すっかり星娘となり、発光するような存在感の舞空瞳さん。
男役に求められる全てのものを兼ね備えた愛月ひかるさん。
この光輝くトリデンテに、明るい未来を投影せずにはいられない。
気になるタカラジェンヌ【侑蘭粋さん】
主要キャストのすばらしさは、言うに及ばず。
わたしが今回とくに注目していたのが、103期の若手娘役・侑蘭粋さんだ。
バウホール公演「龍の宮(たつのみや)物語」で島村家に仕える「お梅さん」を演じられていた、といえばお分かりいただけるだろうか。
主演の瀬央ゆりあさん扮する青年・清彦との、一対一のワンシーン。
まだ下級生でありながら、説得力のある落ち着いた芝居が印象的だった。
侑蘭さんを見ていると、生きる力をもらえる。
いつも、体全体で舞台に立てる喜びを表現されているから。
弾けんばかりの笑顔は清らかで、ひたむきな踊りには胸を打たれる。
端っこにいるときも、宝塚を愛する気持ちで満ちあふれているのがわかる。
そんな一生懸命さに心が洗われ、自然に涙が出てくるのである。
宝塚に限らず、多くのエンターテインメントの世界においては、完成されたものだけに価値があるわけではないと思う。
未完のもの、今はまだ未熟なものを応援し、行く末を見届ける喜びがある。
それはまるで、わが子や庭に咲く花など、命が育ちゆく過程を愛でる行為にも似ている。
いつか大輪の花を咲かせる日を、いっしょに夢みることができる。
また、足りないものや欠けているところに惹かれることだってある。
欠点を魅力に変えてしまう人間こそ、真のスターではないかと思うときさえある。
たくさんの個性がぶつかり合い、凄まじいまでの美しい化学反応が生まれるナマの舞台。
その瞬間に立ち会いたくて、今日も劇場に足を運ぶ。
そして終演後はいつも。
わたしは新たな人格に生まれかわって、希望という名の未来に駆け出していく。
宝塚劇場のエントランスは、夢の入り口であると同時に、希望へと漕ぎ出す港でもあるのだ。
こんなご時世になるとは夢にも思わなかったけれど、どうか千秋楽まで健やかに駆け抜けられますように。
芸術は、どんなワクチンよりも人々の心に効くと信じている。
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