もしもシエルちゃんがおしゃべりできたなら 【子犬のころからシュプレモ育ち】
おかげさまで膿皮症はすっかり良くなり、毎日元気に過ごしているシエルちゃん。
魅惑の白い粒(お薬)が入っていないごはんにガッカリしながらも、1日2回ドッグフード「シュプレモ」を完食している。
🍚しーちゃんは、この2種類をブレンド
初診のとき先生から「治ったらまた見せてくださいね」と言われて。
2週間後にふたたび動物病院を訪れたわたしたち。
待合室で待っていると、7、8人の子供たちがガラスの扉から入ってきた。
「こんにちはぁ〜」
「こんにちは!」
受付のおねえさんが、優しく応対する。
グループを引率する女性が、促すようにひとりの男の子のほうを見た。
すると男の子は大きな声で「〇〇小学校の△△です。きょうは、動物病院のおはなしを聞きにきました」と言った。
どうやら、社会見学のようだ。
ひととおりご挨拶がすんだあと、院内を見回す子供たち。
その視線の先には、患者(患犬)のシエルとわたし。
「わぁ!チワワだ!」
「かわいい!」
「ぼくは柴犬が好き!」
口々に、好きなことを言っている。
だが授業の一環だからか、そばに寄ってきて撫でたりはしない。
むしろていねいな敬語で、わたしに質問をしてきた。
「どこがわるいんですか?」
「とても元気そう」
首からかけたボードのようなものに、なにやら書く準備をはじめた子もいる。
こ、これは!
病気の犬の飼い主へのインタビューではないか!
わたしの発言が、彼らが授業で発表する資料の一部となってしまう。
膿皮症、湿疹、完治、再診…
小さい子どもだ。
むずかしい言葉を使ってはならない。
わたしは慎重にこう答えた。
「おなかにカイカイができてしまってね。ここの先生に治してもらったから、もう良くなったんだけどね。治ったらみせてって言われたから、もう一回来ているんです」
「じゃあ、どっこもわるくないんだ!」
「よかった〜」
完ペキだ。
わたしは胸をなでおろした。
ペットを飼っている市井のおばさんとして、わたしは模範的な回答ができたと思う。
そこでシエルの順番が回ってきて、診察室に入った。
診察室から出てくると、こんどは猫のコーナーで話を聞いていた彼ら。
その姿を認めると、シエルはそちらに行きたがって、キュンキュンさみしそうに鳴き出した。
「どうしたのしーちゃん」
仲間に入りたいんだね。
一緒に遊びたいんだね。
でもしーちゃんイヌだから、一緒に回ることはできないんだよ。
受付のおねえさんが、あの子たちが小学二年生であることを教えてくれた。
そこでわたしはひらめいた。
小学二年生、すなわち八歳。
シエルと同い年なのだ。
犬は人間の数倍の早さで歳をとるというが、生きてきた年数としては同じ。
人間と犬という種族の違いはあれど、なにか感じるものがあったのだろう。
しーちゃん。
あなたが人間だったら、あれくらいに成長しているんだね。
あなたがあの子たちみたいに、お話できたらどんなにいいだろう。
そんなことを考えながら帰途に着いた。
晩御飯の時間になった。
いつものようにシュプレモを出してやる。
シエルは失望したような面持ちで、じっと器を眺めている。
「なんで毎日おんなじやねん」
その目は、そう言っているようだった。
「シュプレモのおかげで、健康な犬でいられるんだよ」
わたしは、シエルが口がきけなくて良かったと思った。
📕 「魅惑の白い粒」に関しては、こちらの記事をご覧ください。
人気ブログランキングに参加しています。
ポチッと応援クリックを頂けると、励みになります。