ミセスCAのオン&オフ日誌

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血は争えない【ミュージカルに生きる息子と、声優になりそこなった母】

ショービジネスの世界

 

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息子が出演するミュージカルのお稽古が、佳境に入ってきた。

来月は、いよいよ本番だ。

連日の通し稽古で、気の休まるときがなさそう。

うちでもブツブツ台詞を呟いたり、とつぜん歌い出したりして、挙動不審きわまりない。

 

母親がわたしでなかったら、この子はいったいどうしたんだと思うだろう。

というのも、わたし自身も10年ほど前、演技の勉強をしていたからだ。

 

はじめは、結婚披露宴の司会者の勉強をしようと思っていた。

だが、若いころ憧れていた声優になる夢が、30代後半になって再燃してしまったのだ。

 

年齢的に無謀なチャレンジだと知りつつも、わたしは声優学校の門を叩いた。

 

日本ナレーション演技研究所

 

代々木にある、由緒ある声優養成所「日本ナレーション演技研究所」

たくさんの有名な声優を輩出している専門学校である。

 

まだ息子も小さかったころ。

週1で通える、基礎科に入学したわたし。

周りは、ひとまわり以上年の離れた生徒さんたちばかり。

 

『なんでこんなおばさんが混じってるの?』

という視線を感じないでもなかった。

 

でも年齢は年齢。

タイムマシンがあるわけじゃないし、時間は戻せない。

 

『年齢なんて、ただの背番号』

そう言い聞かせて、自分を鼓舞しつづけた。

 

CMや、ドキュメンタリー番組のナレーションがやってみたかった。

声の演技を学ぶのだから、てっきりイスに座ったまま授業が進行するものだとばかり思っていた。

 

ところがどっこい!

 

演技というのは、体全体を使って行うもの。

全身の筋肉や器官をフル稼動して、あふれ出る感情を声にのせる。

実際に立って動いて、顔出しの俳優さんとなんら変わらないレッスンがくりかえされる。

だからプロの声優さんの声には臨場感があるんだと、やってみて初めて腑に落ちた。

 

それほどド素人だったわたしだが、おそらくクラスのだれよりも努力したと思う。

卒業公演、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」では、妖精の女王ティターニア役を演じ切った。

年齢制限ギリギリというハンデを背負いながら、無我夢中で走りつづけた1年。

厳しい競争をくぐり抜け、修了時には講師の先生から推薦状をもらい、プロダクションのオーディションへの切符を勝ちとった。

 

しかし、世間はそんなに甘くない。

業界は若い子を求めている。

 

実際、合格するのは若く美しい人たちばかり。

いまや声優といえども、顔出しは当たり前。

カリスマ性やアイドル性が備わっていないといけないのだ。

 

その点でわたしはオールアウト。

せっかくのチャンスをくださった先生には合わせる顔がないが、わたしにも潮時というものは分かっていた。

2年目に挑戦するという選択肢は、残っていなかった。

 

結果は出なかった。

でも声優を目指していた1年間が、無駄になったかというとそうではない。

わたし自身の学びはもちろんのこと。

息子がそのスピリットを受けつぐという、予期せぬ副産物がついてきた(笑)

 

わたしは、自分の夢を子どもに押し付けるタイプではない。

ただ、自分が情熱を感じるものを、子どもと共有してきた。

だからこのたび、息子がここまで芝居の世界に傾倒するとは思ってもみなかった。

 

わたしの人生は、わたしのもの。

息子の人生もまた、息子のもの。

別々のものとして考えてきたつもりなのに、血は争えないものだ。

 

うって変わって父親は、芸事などにはまったく興味がない。

あきれながらも、仕方なく応援するはめになっている。

今回の舞台も、

「千秋楽には仕事で行けないけど、日曜日には観に行ってやる」

などと恩着せがましく言っているが、ちょっと嬉しそうだ。

 

夢が星となって現れたとき

 

夢は、なんどでも描ける。

でも、夢を叶えるには時機というものがある。

かつて、CA養成スクールの先生はこう言った。

 

人にはだれも、星が巡ってくるときがある

星が目の前にきたときに、それをつかみ取れる人間になりなさい

 

この言葉を座右の銘としてきたわたしだが、いま息子に捧げるとしよう。

 

きみはまだ若い。

なんにだってなれる可能性を秘めている。

 

若者特有の傲慢さと、経験不足からくる萎縮が同居する年代。

きみの星が、いつきみの前にあらわれるかわからないけれど。

 

まずは目の前にある舞台の成功を、心から祈っている。

 

 

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