息子の舞台の中止が決定した。
命さえ、魂さえ削るようにして、日夜お稽古に励んできた彼。
手前味噌で恐縮だが、つい最近、通し稽古の動画を見せてもらって、その出来栄えのすばらしさに舌を巻いたところだ。
息子たちのパフォーマンスを褒めた、舌の根も乾かないというのに。
それは突如として、お蔵入りとなってしまった。
公演グッズのデザインなども手がけていた彼。
予定通り仕上がった大量のグッズの処理に追われ、昨夜は家に帰らなかった。
どんな気持ちで、届いたダンボールの山と向き合ったのだろうか。
彼らの無念さを思うと、胸が痛い。
劇団四季や宝塚歌劇をはじめ、演劇やミュージカルは軒並み興行中止となってしまった。
夢をみるための場所に突きつけられた、ウソみたいな現実。
コロナウイルスという目には見えない脅威と、いつまで戦えばいいのだろうか。
暗いニュースばかりが飛び込んでくる毎日。
この閉塞感から抜け出すことができるのは、近い未来かそれとも。
生死に関わる分野でないと見なされ、いちばん先に切り捨てられるエンタメ。
だがエンターテイメントこそが、人間の心を豊かにする最良の薬だと思う。
息子よ。
どうかくじけないで。
きみが捧げた涙は、いつか光に変わるはず。
きみのなかに宿った、人の心を映し出す術。
それはきみの一部となり、消えることなく息づいている。
いつの日かこの経験さえもが、芸の肥やしとなるだろう。
いまはただ、息をひそめてそのときを待とう。
時代の波にのみこまれぬよう、しっかりと帆を張って。
嵐が行き過ぎたらもういちど。
思いっきり漕ぎ出せばいい。
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