免許更新センターにて
昨年の暮れに、運転免許の更新に行ってきた。
5年ぶりの免許更新センター。
年末だからか?いつもより人が少なかった。
まずはカウンターで必要書類を記入。
その後、視力検査と写真撮影を済ませて教室へと案内される。
そこに待ち構えているのは、満面の笑みの教官たち。
運転免許センターの職員は、ほとんどが警察官なのだそうだ。
一般には、態度が威圧的で怖いと言われている。
立場上、そうしないといけないのだろう。
でも、わたしにとっては仏様のような存在だ。
いつ更新に行っても、優しく和やかに迎え入れてくれるから。
なぜって?
わたしは優良ドライバーだからだ。
20年間、無事故無違反。
ゴールド免許を有する者は、運転免許センターでVIP扱いを受けることができるのだ。
びきさん、すごいっすね!って?
えっ、いや〜あの…
ちがうんです…
20年間、運転していないだけなんです。
わたしがペーパードライバーになったいきさつ
思いおこせば、20年前。
免許取得後、はじめて路上に出たわたし。
その傍らには、結婚後まもない夫の姿。
心配だからと横についてくれたはいいが、わたしのあまりの危険運転っぷりに
「死にたいのか!」
と、トート閣下ばりの形相で叱られてしまった。
さいわい、「死ねばいい!」と言われることはなかった(よかった)が、それ以来わたしがハンドルを握ることはなかった。
潔いまでのペーパードライバーっぷり。
超高額な身分証明書。
でも、これでいいのだ。
あのまま乗っていたら、きっとたいへんなことになっていただろうから。
優良ドライバー講習
講義が始まった。
教官は、なんどもなんどもこう繰り返す。
「みなさんは、優良ドライバーですから」
30分足らずの講義中、あまりに褒めちぎられるものだから、だんだん居心地が悪くなってきた。
だって、わたしは運転していないのだもの。
褒められるようなことはなんにもしていない。
そのうち、【優良ドライバー】という言葉を聞くと、お尻のあたりがムズムズしてきた。
ウヘヘ。
身に覚えのないことで褒められ続けると、いたたまれなくなるんだなぁ。
はやく終わらないかなと、そればかり考えていた。
講義が終わり、やっとの思いで退出。
あとは交付を待つのみとなった。
わたしの順番が回ってきた。
新しい免許証を受け取ったあと、そばに並んでいる機械に4桁の数字を入力して、本籍を確認するようにと言われる。
そういえば、5年前にも4桁の番号を設定したなぁ。
これは後日、またなにかに使うことがあるのだろうか。
わたしは、近くにいる職員のかたに質問をした。
すると、
「 その番号が必要なのは今日だけです。」
という答えが返ってきた。
わたしが5年前の番号も覚えていると言うと、
「あなたは、顔だけじゃなくて記憶力もいいんですね〜。」
と、ニコニコして言われた。
ちがうんだ!
わたしは乗っていない!
夫と心中しかけたあの日から、いちどもハンドルを握ってはいない。
優良ドライバーの名をかたる、ペーパードライバーというニセモノなんだ!
わたしは恐縮なのを通り越して、そう叫びたい衝動にかられた。
しかしここは、半分警察だ。
余計なことは、言わないほうがいい。
ほんとうの気持ちを自分の心だけにおさめて、わたしは免許更新センターをあとにした。
黄金に輝く、ドライバーズライセンス。
変わっていくのは、年をかさねゆく自分の写真だけだ。
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