【CAだけが知っている】シャンパンにまつわるナイショ話
きのうのフライトのビジネスクラスでは、シャンパンがよく出た。
本当にシャンパンが好きなひとというのは、食前から食後まで、ずーっとシャンパンを飲みつづける傾向にある。
これは航空会社の経済的に、手痛い出費。
だがわれわれ客室乗務員にとっては、ちょっとありがたい。
さて、そのココロは?
サービスアイテムとしてのドリンクの分類
機内サービスをする側からみて、飲みものにはいくつかのカテゴリーがある。
それは大まかに分けて、以下の4つ。
①:注ぐだけのもの
オレンジ、アップル、トマトなどのジュース、ワイン、ミネラルウォーター、炭酸水など。
ペットボトルや瓶、紙パックからそのまま注げば良い。
⇦シャンパンはここ🥂
②:そのつど缶を開けるもの
ビール、コーラ、スプライト、ジンジャーエールなど。
その場で缶のプルタブを開けないといけないもの。
氷は要らないと言われることが多い。
③:混ぜるだけのカクテル
ジントニック、シャンディガフ、ブラッディメアリー、レッドアイ、スクリュードライバー、モスコミュール、コークハイ、ハイボールなど。
マドラーで混ぜるだけの、シェイカーを必要としないアルコール飲料。
氷やレモン、ライムなどを入れる手間がある。
④:シェイカーで作るカクテル
弊社オリジナルレシピに基づいた、しちめんどくさい(もとい)手の込んだカクテル。
ひとつひとつに、ファンシーな名前がついているよ⭐︎
ドリンクサービスの難易度と所要時間
①から順に、難易度も所要時間も上がっていく。
お客さまが数人であれば、大差のないこと。
だけど数十人レベルになると、ワークロードにはっきりとした違いが出てくる。
飛行機はレストランと違って、早く食事を終えて休みたいお客さまも多い。
それゆえ、あまり優雅にサービスをつづけてはいられない。
しかしお上は他社との差別化をはかり、ファンシーなカクテルレシピを手裏剣のごとく送りこんでくる。
④のオーダーばかりがつづく日、わたしは織田裕二になる。
「サービスは会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」
(てれれれれれれー♪)
ゆーて日本人クルーは、わたしひとりしかいない。
だから『踊る大捜査線』ネタをぶっこんでも、だれも理解してはくれない。
せいぜいユニバーサルなギャグ…
すなわち、ネバーエンディングストーリーのテーマ曲なんかを歌ってお茶を濁すのが関の山だ。
「Never ending service〜」(終わらないサービス)
これを聞いたクルーは、たいてい一緒に歌ってくれる。
ドリンクサービス現場の裏側
ここ数年でいちばんやっかいなのが、ハチミツやフルーツのペーストを使用したカクテルだ。
混ぜてもまぜても、グラスの下のほうでガッチリと固まっているハチミツ。
冷たい液体にはちみつを入れたって、ぜったい溶けないと思う(穴掘って言う)
ルバーブのペーストは固まりこそしないが、蜂蜜と同じく手ベタベタ系なので、そのつど手を拭いて仕切り直さねばならない。
(お上は知らない。末端で働くわれわれの手が、スーパーベタベタであることを)
とにかく、時間がかかってしゃーない(穴掘って言う)
ドリンクだけでなく、液体アイテムの取り扱いにはじゅうぶん注意が必要だ。
きのうはスチュワードがチーズケーキに添えるベリーのソースを準備しているとき、うっかり返り血ならぬ返りソースを浴びていた。
真っ白なシェフ服を紅に染めた彼を見て、パーサーがひとこと。
「Murder in the kitchen!」(台所殺人事件)
すぐさま、ギャレーは笑いの渦に(実際それっぽかった笑)
だれかが失敗しても、とがめるどころか、ネタにしておいしい方向に持ってってしまう。
この会社で働けて、ほんとうに良かったと思う瞬間である。
フライトで残ってしまったシャンパンはどうする?
さて、シャンパンに話を戻そう。
機内で余ったシャンパンをどうするか、あなたはご存じだろうか?
すてる?
その通り!(パネルクイズの児玉清さんふうに)
開栓済みのワインやシャンパンは、つぎのフライトまで持ちこせない。
もったいない話だが、その場で流しに捨てるのである。
気の抜けたシャンパンは、ただの酵母ジュース。
そんなものを、つぎのお客さまにお出しすることはできない。
でも…でも…!
パイパー・エドシックが!
ニコラ・フィアットが!
高級シャンパンたちが、流しのなかに渦を描いてみるみる落ちていく… 🌀
はじめはその光景を見て、悲しみが止まらなかったわたし。
だが、あるとき。
「シャンパンで手を洗うときれいになるのよ〜」
とクルーから教えてもらった。
シャンパン酵母のなせる力であろうか。
たちまちしっとりとキメが整い、ハリのある肌になれるのだ!
それからというもの。
機会があれば、シャンパンで手を洗っているわたし。
いつかシャンパンで、顔全体を洗ってみたい。
しかし機内ではメガ盛りメイクが施されているため、洗顔することはできない。
スッピンで乗務をする勇気はないから、一生この野望がかなうことはないだろう。
人気ブログランキングに参加しています。
応援クリックをいただけると励みになります🍾