日本人CAの役割【其の一】日本語アナウンス
外資系航空会社における、機内アナウンスの内情をお話ししよう。
基本的に、機長とパーサーは、自分の母国語と、共通語である英語の両方でアナウンスをする。
われわれ日本人乗務員は、それを受け、その場で臨機応変に日本語訳して、乗客に伝える。
アナウンスを担当する者の裁量によるところが大きいので、表現の違いや伝わるニュアンスには個人差がある。
お決まりの情報については大まかな雛型が用意されているが、予期せぬ事態に見舞われたり、機長やパーサーの個人的な見解を伝える際には、自分で言葉を探さねばならないので、さまざまな葛藤がおきる。
日本人乗務員には、あくまで外国語で入ってきたインフォメーションを直訳することが求められている。
しかし、文化の違いにより、
「それ、どうやって訳せと?」
とか、
「それ、言うたらあかんやつやん」
という内容のものが出てくる。
「どうやって訳す?」シリーズの中で厄介なもののひとつをご紹介しよう。
窮地におけるユーモア
それは、例えば直訳するとこうだ。
「我々は遅延した。
だが、おかげであなた方は、わたしの優秀なクルーとより長い時間を共有することができて幸運だ。」
(幸運…幸運…だと?
到着遅れとんのに、どの口が言うとんねん!)
この手のブラックユーモアを聞くたび、焦りとともに怒りがこみ上げてくる。
へんな汗すら出てくる始末だ。
キャビンを一瞥すると、ゲラゲラ笑っている外国人乗客と無表情の日本人乗客。
その温度差たるや、すごいものがある。
わたしは、その冷静と情熱の間をかいくぐって、自分なりの着地点を見つけ出す。
機内アナウンスは即時通訳が身上だ。
「到着が遅れまして、みなさまにはたいへんご迷惑をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。」
乗客に見えない位置のマイクロフォンから話すときも、わたしはかならず頭を下げる。
そんなわたし見てをクルーがモノマネするが、それを制して続ける。
わたしは日本人だ。
日本人乗客の気持ちが理解できるのはわたしだけ。
外資系エアラインで働いていても、その気持ちだけは忘れない。
語弊がないように付け加えておくが、モノマネをしているクルーが、状況判断できていないわけでは断じてない。
むしろ場の空気を読んだうえで、おどけているのだ。
ヨーロッパの人たちは、相手と、そして自分自身の心を解き、和ませるためにユーモアという手段を使う。
とかくピリピリしがちな日本人には、学ぶべきところが非常に多いと思う。
しかし、反省すべきところをしれっと笑いに変えてしまうのだけは、勘弁してほしい。
機内アナウンス「それ、言うたらあかんやつちゃう」シリーズへは、以下のリンクからどうぞ💁♀️
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