ミセスCAのオン&オフ日誌

外資系キャビンアテンダントVikiのブログ。都内の公立中学で英語の時間講師をしています。

【小学生】英語はいつから習い始めれば良いか

【小学生】英語はいつから習い始めれば良いか

 

 

"A golden retriever is coming to our house tomorrow."

(明日、うちにゴールデンレトリーバーが来るんです)

 

いきなり、完全な英文で近況報告してくれたなっちゃん。

ずっと欲しがっていた犬を、あす家族に迎え入れることになったのだ。

なっちゃんのはやる気持ちが、パソコンの画面越しに伝わってくる。

 

彼女は、今年小学3年生になったばかり。

わたしに英語で知らせたいと思って、お父さんから英訳を教わったらしい。

自分で考えた文章ではないにしろ、まだ8歳の日本人がしっかりと一文を言い切れるのは素晴らしいことだと思う。

 

なっちゃんというのは、わたしの唯一のオンラインの生徒さんだ。

お世話になっている方からのご依頼で、週に1回だけzoomでレッスンを行なっている。

英会話を習いたいと言い出したのは、親御さんではなく当の本人。

まだ小さくてあどけないのに、「将来、海外に行って英語を話したい」という明確なビジョンを持っている。

 

英語上達のカギは、こう言っちゃなんだけど、学ぶ本人のやる気次第だとわたしは思う。

どれだけ高名な先生に習ったとて、まったくやる気のない子は伸びないだろう。

 

それは小学生に限ったことではなく、他のすべての学生や社会人にも当てはまる。

やらされている感が強い人や、そもそもやる気のない人は、いつから始めたって同じだ。

そういう点では、「英語の早期教育は意味ない」などという理論は当たっているかもしれない。

 

『意志あるところに道は開ける』というが、なっちゃんはそれをみごとに体現している。

スタートしてまもなく1年だが、彼女の進捗状況といったらすごい。

小学2年生から始めたので、ほぼまっさらな状態だった。

でもそれが功を奏して、新しいスポンジみたいにぐんぐん吸収してくれる。

 

たとえば、"Really?"の発音ひとつとっても、大人は「リアリー?」とカタカナ風になってしまうところが、なっちゃんはRの発音からlの発音まで完璧にできているのだ。

いちいち矯正したり、繰り返し指導するわけではない。

わたしが一度言ったことを、真似て発声しているだけなのだ。

そっくりそのままの音を出してくれるので、とても気持ちがいい。

それでついつい大げさに褒めてしまう。

すると嬉しそうに笑って、また次も頑張る。

理想的な正のループが出来上がっていて、本当に教師冥利に尽きる。

 

ローマ字教育が英語学習に及ぼす弊害

 

大人だけではなく、中学生でもこうはいかない。

なぜなら彼らは、すでにローマ字を修得しているからだ。

ローマ字というのは、日本語の発音をアルファベットで表記するためのもの。

だからローマ字の発音は、まんま日本語のそれなのだ。

ローマ字は便利で、いまやわたしたちの生活になくてはならないものだけど、それと同時に、英語学習の弊害となっているのも事実だ。

ローマ字にすっかり馴染んでしまった後に、さあいざ英語の発音で読めと言われても…それは難しいでしょう。

(文部科学省に喧嘩を売ってるわけではありません🙇‍♀️)

 

なっちゃんへの英語指導の方法

 

 

わたしは小学校で教えたことがないので、なっちゃんのレッスンには学習指導要綱を参考にしていない。

実際の生活で使われる、楽しくて必要な会話だけを教えている。

 

なっちゃんの好きな『すみっコぐらし』を使って、色や数字について学んだり。

色鉛筆で絵を描きながら、果物や動物の名前(名詞)を覚えさせたり。

ハンバーガー屋さんで好きなものを頼めるよう、実践形式でロールプレイしたり。

メイクが大好きな子なので、コスメの話で盛り上がったりすることも多い。

 

"How many lipsticks do you have?"

(何本の口紅を持っていますか?)

"Do you want new eyeshadow?"

(新しいアイシャドウがほしい?)

"What color do you like?"

(何色が好き?)

 

などの自然な会話文を、話の流れでどんどん投げかけていく。

するとちゃんと正しい発音と文法で答えてくれる。

 

英語は自分の生活や感情とリンクさせると「使える」ようになる

 

彼女の興味の赴くままに、彼女の好きなことについて話すよう心がけてきた。

これはマンツーマンだからこそ叶うカスタムメイドなレッスンだが、わたしは学校でもできるだけ生徒の興味を引き出す工夫をしている。

 

たとえば、マークがハナに「明日うちに犬が来るんだ」と言うスキットを読ませたところで、すぐに定着する子どもは少ない。

想像力の豊かな子にはそれでOKだが、そうでない子には教科書の例文だけでは足りないのが現実だ。

 

だからわたしは、できるだけ彼らの目線に立った例文に置き換えて説明するようにしている。

すると、「あ〜、そういうことね!」などという独り言が聞こえてくる。

そう、その瞬間が大事なのです!

自分ごとに置き換えて、自分の頭で考える。

それができるようになると英語は楽しくなるし、定着率もぐんと上がるようになる。

 

そう遠くない未来、なっちゃんも中学生になる。

そして、"A golden retriever is coming"の「Be動詞+動詞のing形」の部分が「確定した近い未来」を表す、などと覚えないといけない日がやってくる。

なっちゃんは、「明日ワンコが来る」という、差し迫った実体験に基づいてこの文を体得したので、違和感なく先生の説明が聞けるだろう。

 

言語って結局、そういうことだと思う。

生きた自分の言葉が、英語に変換されて腑に落ちたとき。

その瞬間に、いろんなものがつながって回路を作り出す。

その回路がどんどんつながって、自分ごととなっていけば、英語は確実に楽しくなる。

 

公立中学校が担う英語教育の使命

 

 

公立中学の教壇に立ってみて初めてわかったことがある。

それは小学生のうちにどれだけ英語が好きになったかで、続く英語人生が変わってくるということだ。

昭和時代の話で恐縮だが、わたし自身も小学5年生から英語の塾に行き始め、英語が好きになったことにより、中学以降ずいぶんアドバンテージがあったと感じている。

 

わたしは時間講師として、中1と中2のクラスを複数受け持っている。

中2は言わずもがな。

中1でも1学期の段階で、すでに個人間に大きな差が見られる。

小学校でしっかり英語に親しんだ子どもは、自信を持って授業に臨んでいる。

かたや英語に苦手意識のある子どもは無表情で、口も手も止まりがちだ。

そして英語ギライの子どもは、関係のないおしゃべりに走りがちだ。

 

おしゃべりをする子が悪いのではない。

そこまで英語がわからないモノだと思い込ませてしまった経緯に問題がある。

そしてその経緯について、後からあれこれと議論しても仕方がない。

先生も生徒も、これからできることを考えるべきだ。

わたしはみんなに言う。

「大丈夫、誰も置いて行かないからね。楽しく、リラックスしていこう!」

 

学びの早い子に対しては、より深い理解へとつながる導線を。

スローラーナーに対しては、英語を楽しいものだと思わせる施策を。

これらを両立するのは難しいけれど、いろんな子がいて当たり前。

違いを受け入れ、それぞれのスピードで前へ進んでいけるようにするのが教師の役割。

そのために少人数制が導入されているのだから、メリットを存分に活かしていかなければ。

 

結局、英語の勉強はいつから始めるのが効果的?

 

わたしの結論。

それは、「人による」

 

「そんなことが聞きたかったんじゃない!」

「具体的な年齢や学年を知りたかったのに!」

と怒られるかもしれない。

 

だけど、子どもはみな同じじゃない。

英語を始めるのにふさわしい時期というのは、それぞれ異なってしかるべきなのだ。

 

教師と保護者の子どもに対するサポートに加え、子ども本人が自分ごととして学ぶ姿勢。

この双方の力が働かないと、英語ができる子どもに育つのは難しい。

 

いつ始めてもいい。

二つの車輪を同時に走らせることができたら、学びは加速する。

学校という場においては、教師が前輪を動かし、後輪がついてくるよう促すのが使命。

全員が参加できるような授業を目指して、わたしは今日も教壇に立つ。

「英語が楽しい!」と言う子どもが、一人でも増えることを願って。

 

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