佐藤愛子/著【九十歳。何がめでたい】70代、80代の女性におすすめの本
病院で暮らす母に、本を送った。
『九十歳。何がめでたい』
直木賞作家、佐藤愛子先生のベストセラーエッセイだ。
書店の売れ筋ランキングコーナーにずっとあるので、ためしに手に取ってみた。
まず、字の大きさにビックリ!
この本の読者層が、瞬時に想像できた(笑)
読みやすさにまで配慮されているのが、人気の理由の一つであろう。
単行本に加えて、文庫本サイズもあるのがいい。
パラパラと見てみると、まあまあ面白そうだし、とりあえずレジへと向かった。
うちに帰って、さわりだけでも読んでおこうと、ページをめくってみた。
すると、これがめちゃくちゃおもしろい!
本を読みながら、声を出して笑うなんて、あまりないこと。
しかしこれは容赦ない。
思いがけず、「グハッ」とか「ブフッ」とか言っている自分に驚く。
すぐ母に送ってやるつもりが、わたし自身が読みふけってしまう羽目に。
【九十歳。何がめでたい】感想
佐藤愛子先生を、お年寄りだと侮ってはならない。
無防備に読んでいると、いつの間にやら心の中までどんどん入ってこられる。
なにげないエピソードの中に、笑いや涙やメランコリー、一抹の教訓まで。
けっして押し付けがましくないのに、オピニオンリーダーとしての矜持がちらちらと見え隠れするのもカッコいい。
なにより、読後感がいい。
綺麗事がほとんど書かれていないため、スッと腑に落ちる感じ。
読むだけで元気が出る本というのは、なかなか珍しい。
読み終えて母に送ると、数日後に電話があった。
「あの本、おもしろいわぁ〜。佐藤愛子さんの本、お母さん好きやわぁ〜」
あまりに楽しすぎて、いっきに読むのはもったいないから、少しずつ読んでいるそうだ。
「お母さん、『戦いやまず日は暮れず』って知ってる?」
「ああ、それはずいぶん若いころに読んだ」
「あ、そっちは『戦いすんで日が暮れて』だね。『戦いやまず〜』はエッセイみたいよ。また送ってあげるね」
読書家の母。
かつては、スタンダールやドストエフスキーなど、難しい小説もたくさん読んでいた。
認知症になっても、本を読むことだけは変わらずできるみたい。
わたしはさっそくオンラインで、『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』を注文した。
母に送る前に、自分でもまた読もう(笑)
同じ小説家の、同じ本を読む。
それだけで、心がつながっているように思える。
あれこれ感想を言い合える幸せを、いまは感じていたい。
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