【リコリス/ラクリス】日本人がまずいと感じる、北欧で大人気のお菓子<ハーブグミ>
今日も無事、フライトが終了した。
冬休み前の静けさか、めずらしく空席がたくさんあった。
お客さま、クルー、どちらにも余裕があるフライトだった。
さて、わたしがこの夏から勝手にモニタリングしている、ステイ先のホテルのウェルカムウォーター。
寒くなったら撤去されるかと思っていたが、ひきつづきロビーに置いてある。
うれしいことに、通年のサービスとなりつつあるようだ。
しかし寒くなってからは、ウォーターサーバーの中に入っている果物も、レモンやオレンジといった柑橘類一辺倒。
なんやかんやと面白いものが入っていた夏が懐かしい。
だが、その横に置かれるお菓子が充実していく傾向にある(なにを考察しとるんじゃ)
トラディショナルなデンマーククッキーに、赤や黄色、グリーンやオレンジ色したカラフルなグミ。
しましま模様で、レッサーパンダのしっぽみたいなのも。
見た目だけでなく、歯ごたえも食感も、じつにバラエティーに富んでいる。
ここで、下段中央のびんにご注目いただきたい。
黒くて、ひたすら黒くて、はっきし言ってナゾイ味の食べ物!!
アップでどうぞ⇩
これは危険。
危険なやつですよ。
お砂糖がまぶしてあって、おいしそうな体(てい)を装っている。
なにも知らないあなたはきっと、無邪気に手を伸ばすだろう。
だがそれは、世間をあざむくための仮の姿。
わたしが一定の距離をとっていると。
一緒にフライトしているY子さんが「やだ〜ラクリスがあるぅ!あたしこれ好きなんだよね〜♡」と言いながら、パクパク食べはじめた。
Y子さんは帰国子女だ。
ヨーロッパに何年か住んでいたこともあって、ラクリスには抵抗がないという。
「これはそんなにキツくないから大丈夫だよ」のひと言にのせられて、ひとつぶ口に入れてみた。
『ん、たしかにこれならいけるかも?』と思ったのもつかの間。
砂糖のカバーがはがれたあと、例のラクリスみが…うええええ
ラクリスは、姿かたちを変えたって、やっぱりラクリスなのである。
同僚とラクリスとわたし
いまをさかのぼること、20数年前。
某ヨーロッパ系エアラインの客室乗務員に採用されたわたし。
それまで地元・大阪を出たこともなければ、留学経験もない、ガッチガチのガチ日本人。
現地での訓練中、いろんな場所で遭遇する「黒々とした謎の物体」を不思議な気持ちで見ていた。
それをはじめて口に含んだのは、いつの日のことだったろう。
あまりのまずさに、全身があわだったことを覚えている。
それ以来、同僚から幾度となく差し出される、おすそ分けラクリス。
それはちょうど、大阪の人間があめちゃんやミントのガムを配るような具合だ。
ノーと言えない日本人のわたしは、とりあえず「ありがとう」といただいてしまう自分を、なんど責めたことだろう。
せっかくもらった手前、おいしくないとは言えなくて、人知れずトイレで涙を流したことも。
いまではスマートに遠慮できるようになったが、それでもたまに罠にはまるときがある。
『喉元過ぎれば熱さを忘れる』ということわざがあるが、喉元過ぎればラクリス忘れるのである。
ラクリス、あるいはリコリスとは
その原料は、漢方でおなじみ「甘草」の仲間・スペインカンゾウという名前の多年草植物である。
そのハーブの根っこから抽出したエキスを加工して作られたのがラクリス菓子。
お薬みたいなテイストを感じるのはそのためだろう。
ヨーロッパの中でもドイツ、そしてデンマーク、スウェーデン、ノルウェーなどのスカンジナビア諸国を中心に根強い人気がある。
アメリカ人の大好きな炭酸飲料ルートビアにも、リコリスがブレンドされている。
リコリスは子ども向けの甘いものから、渋好みの超辛口(激塩味)なものまで、多種多様なスタイルで愛されている。
おじさん度が高くなるにつれて本気度も上がるので、おじさんから勧められるものにはじゅうぶん気をつけたほうがいい。
なかにはどう見たって電気コードとしか思えないヒモ状のものや、「工具か!」とツッコミたくなるものまで。
もうあのごむごむした歯ざわりを想像するだけで泣けてくる。
リコリスがどんな味か試してみたい人へ
日本でも手に入る最もポピュラーなものは、動物や乗り物などの形をした、こんな感じのグミやキャンディーだろう。
だが気をつけろ。
彼らはまぎれている。
ファンシーな色のグミのあいだに、しれっと。
可愛い姿をしているが、その味は攻撃的かつ衝撃的だ。
抽出してみた。
車やクマの形をしている…
見た目はとってもかわいい。
ラインカメラで加工してみた。
ノスタルジーを感じる(遊ぶな)
日本人ならだれもが好きだけど、欧米でウケない味ってなんだろう?
日本ではまったくなじみのないフレーバー、リコリス。
逆に、日本人にとっては国民的人気だけど、外国人がきらいなものってなんだろう?
ひと昔前まで、グリーンティーや納豆は「うえええ」と言われていたが、いまではメジャーな存在にまで台頭してきたし、あんこやせんべいの類いも、まずまずいい感じで受け入れられている。
まんじゅうや団子、おもちなんかは、好んで食べる人も出てきた。
アメリカでは餅アイスなるものを見たことがある。
しいて言うなら、やっぱり海藻類かな。
ワカメやコンブを食すこと自体、信じられないと言われる。
のりの佃煮とか、とろろ昆布とかは、磯っぽい風味が苦手な欧米人にはウケがよくなさそう。
そもそも食べ物として認識されていないことが多い。
おにぎりを巻く海苔を包装紙だと思って捨てようとする人を何度止めたことか。
あとは梅干し。
ピクルスなどの酸味とは違って、酸っぱさのレベルが高すぎるみたい。
機内サービスの梅干しおにぎりの評判があまりに良くないので、からし明太子(spicy cod roe)に変わったくらい。
辛子明太子おにぎりの売れ行きは上々。
ヨーロッパの人たちは、スパイシーなものが好きだ。
わさびテイストの豆やスナック、七味唐辛子、ゆず胡椒などはとても人気がある。
旅行中、料理の味変のために、小瓶やチューブをわざわざ持ち歩く人もいるくらい。
しかしそのうち、海のものも梅干しも、世界に受け入れられる日が来るだろう。
わたしが苦手なリコリスと仲良くなれる日と、どちらが早いだろうか。
コスモポリタンを名乗りたいなら、まずは異文化の食を攻略しなければならない。
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